春、水を張られた田圃に苗が植えられ、梅雨の季節を過ぎ暑い夏を越え、陽差しが優しくなってくる9月ごろ、黄金色になった稲が刈りとられる――。酒の香りや旨みは米の品質に大きく左右されます。良質の米を安定して確保することは、神杉にとってなにより大切です。理想の酒造りのため、地元農家の方と協力して酒米の研究・開発にも取り組んでいます。
日本酒に詳しい方は、酒米といえば「兵庫県産山田錦」を思い浮かべるかもしれません。確かに多くの酒蔵で使用されています。当蔵でも使用しています。ただ、やはり米質にこだわるのなら、できれば米作りの過程も目に見えるところから仕入れたいと考えています。現在、神杉の使用する酒米のほとんどが、奥三河でつくられている「夢山水」、安城市産の「若水」です。『愛知の地酒 神杉』の名の通り、風土に根ざした旨い酒造りを目指しています。
当蔵の地元安城市の農業試験場で開発された酒米「若水」。昭和60年代「愛知のお米と愛知の酵母で愛知のお酒を造り、まずは地元の人々にご愛飲していただこう」というコンセプトのもと開発されました。神杉では、20年以上にわたり「若水」でどれだけの品質の酒造りが出来るのか、バラエティに富んだ酒が造れるのかを試行錯誤しながら研究してきました。平成16年より、安城市内の生産者様にお願いして作っていただき、田植えや稲刈りを一緒に体験しながら、酒米の質の向上に努めています。
酒米は必ず玄米の状態で仕入れ、酒造専用の精米機で100%自家精米しています。効率を考えれば委託精米した方が良いのかもしれません。米の状態は年によって、その時によって違います。同じ品種の米でも、水分量が違えば精米中に割れてしまうことがあります。米の状態を見極めて調整しながら丹念に精米する。正直、時間はかかります。しかし、旨い酒造りの第一段階、手を抜くわけにはいきません。